気候変動(TCFD提言に基づく情報開示)
排出量算定と開示手法
環境への取り組みは2000年度よりISO認証の取得と維持を目標として活動してきました。しかし、深刻さを増す地球温暖化対策として、自社の省エネ活動に加え、サプライ・バリューチェーン全体での脱炭素活動への移行を図り、2022年度よりTCFDに賛同してGHGプロトコルに準じた活動へと舵を切っています。

商社という特性上、自社のScope1・2の排出量は事業規模の割に少ないといえます。流通商社という特質を活かして、仕入先・販売先を巻き込んだサプライチェーン全体の脱炭素化を推進することが社会的な責任だと認識しています。
自社Scope1・2及びScope3のカテゴリ別排出量を把握するために「GBP App」として、SaaS型の脱炭素算定アプリケーションを導入しています。
これはzerobord社のクラウドサービスを一部カスタマイズしたもので、全世界の主要拠点やグループ会社にも入力させることで総量把握と、月・年次比較による脱炭素の進捗の見える化を実現しています。
併せて、当社サプライチェーンへも有・無償提供し、協働による活動の強化を目指しています。


環境マネジメント体制
気候変動課題の最高執行責任を有するのは最高経営責任者(CEO)です。マネジング機関は2023年4月に設置したサステナビリティ推進会議であり、年1回、方針、指示及び進捗確認を行います。また、実務運営は年4回開催される環境委員会が行っており、各部署から選出された委員とともに方針についての協議や課題抽出を行います。
その事務局は、経営管理本部ではCSR推進室、営業本部ではグリーンリカバリー・ビジネス部(GRB部)が担い、各配下の全部署に具体的な実務指示を行い、進捗を管理しています。なお、その方向性と活動の適合性について、年1回、取締役会がモニタリングを行う体制を構築しています。このように全社が一丸となって、PDCAサイクルを回しながら気候変動課題に取り組んでいます。

リスクと機会認識
内・外 | リスク | Opportunity(プラス要因) | Risk(マイナス要因) |
---|---|---|---|
内部 環境 |
移行 | ・夏物商品(空調、扇風機等)販売増収 ・環境負荷低減商品の販売機会拡大 ・グリーンボールプロジェクトの浸透と拡大 |
・冬物商品(こたつ、ヒーター等)販売減収 ・環境負荷低減商品の開発コスト増大 ・エネルギー・物流コストの増大 |
物理 | ・BCP.ERS(ビーシーパース)対策商品の販売拡大 ・BCパース需要の拡大 ・防災工事関連商材の販売拡大 |
・社員、社屋、各種設備の安全確保 ・国内外サプライチェーン(商品調達)対策 ・堅牢な商品供給体制(情報・物流網)整備 |
|
外部 環境 |
移行 | ・再エネ調達機運、省エネ関連需要の拡大 ・PPAモデル事業等、再エネ調達の多様化 ・省エネ改修、脱炭素化機運の高まり |
・カーボンプライシング(炭素税)の導入 ・排出量抑制に対する社会的要求の高まり ・環境負荷の大きい商品に対する批判 |
物理 | ・天候災害対策(BCP)需要の拡大 ・緊急災害復興需要、救援需要の発生 |
・社会インフラ(電力、水道等)寸断、停止 ・交通インフラ(鉄道、高速道路)寸断、停止 ・情報インフラ(放送、通信等)寸断、停止 |
気候変動にともなう移行リスクとして、IEAの平均気温1.5℃及び4.0℃上昇時の各シナリオを基に、それぞれ内部、外部のリスクと機会を分析しています。なお、このリスクと機会の財務的なインパクトについてはリソース不足のため、現在、鋭意、集計を行っているところです。一方、物理リスクとしては、IPCC報告書を基に、同じく内部、外部のリスクと機会を分析しており、台風、洪水災害、或いは干ばつ、水不足などの自然災害の規模と頻度を想定し、事業が継続できるBCP対策として、社員の生命、生活の確保は当然のこと、電気、データ通信インフラの確保と分散化、商品仕入サプライチェーンの確保や、物流拠点の分散化を図って複数のデリバリー体制を構築するなど、順次対応策を講じています。
カーボンニュートラルロードマップ
当社の排出量の把握はリソースの関係上、2020年度を基準年とします。一部、集計中のものを含みますが、2030年度には、その総量の50%削減、2050年度には実質カーボンニュートラルを目指します。
当社のScope1は営業車両など、ガソリン消費が大半を占めます。従来のハイブリッド車に代え、順次、EV車を導入します。またScope2は事務所、物流施設などの電力消費が大半を占めており、再エネ電気切替と空調、電灯の省エネ機器を導入し、これらにより中長期的にCO2排出量の大幅削減を目指します。なお、Scope3については、リソース不足により、現在集計中ですが、2030年度には、その半減化、2050年度には実質0%を目指します。

カテゴリ | 対象排出源 | 単位 | 基準年 | 経過年 | 中間目標 | 最終目標 |
---|---|---|---|---|---|---|
2020年度 | 2021年度 | 2030年度 | 2050年度 | |||
Scope1 | ガソリン・ガス | t-CO2 | 2,819 | 2,411 | 1,200 | 0 |
KPI | ガソリン消費量 | ℓ | 942,030 | 799,979 | 400,000 | 0 |
KPI | ハイブリッド車導入率 | % | 87.0 | 88.0 | EV50% | EV100% |
Scope2 | 電気・熱利用 | t-CO2 | 5,182 | 5,181 | 2,000 | 0 |
KPI | 電力消費量 | MWh | 11,349 | 11,779 | 11,000 | 10,000 |
Scope3 | 全カテゴリ | t-CO2 | 集計中 | 集計中 | 50% | ±0% |
KPI | 物流起因排出量 | t-CO2 | 14,100 | 15,907 | 50% | ±0% |
KPI | 廃棄物排出量 | t | 171 | 197 | 50% | ±0% |
KPI | GBP削減効果量 | t-CO2 | 34,319 | 40,701 | 50% | ±0% |
CO2総排出量 | t-CO2 | 集計中 | 集計中 | 50% | ±0% |
※対象国:日本、中国、韓国、台湾、タイ、ベトナム、フィリピン、シンガポール、マレーシア、インドネシア、アメリカ、メキシコ、ドイツ、チェコ。※算定方法:GHGプロトコルに準じ、Scope1、Scope2は実数排出量、Scope3はカテゴリ(以下、C:)C1:原材料、C5:廃棄、C6、7:通勤等、C4,9:輸配送、C11:使用を中心に現在集計途上にあります。ただし、C1:原材料、C11:使用については、当社ブランドのオリジナル商品のみとし、当面は商品ごとの排出係数を活用した算出を検討しています。なお、それぞれ達成のためのKPI指標を設定しており、その進捗も併せて管理しています。
取り組み
◆国内主要拠点を段階的に再エネ電気に切り替え
大阪本社管轄から順次、全国展開を予定
当社のScope2(エネルギー間接排出)の排出量削減のため、2022年7月1日から大阪本社第1、第2、第3ビル及び11月4日からロジス大阪(大東市)の電力を、大阪ガス株式会社から調達する再エネ電気「D-Green RE100」に切り替えました。

これにより年間の排出量が595t-CO2削減される見込みです。この電気は再エネ電気とともにトレッキング付き非化石証書が供給されるため、「RE100」の要件を満たすものです。このように、順次、当社自社所有となる主要拠点(名古屋、九州、広島など)の再エネ電気への切り替えを進めていきます。
独自のエンゲージメント(協働)
—YAMAZEN's WAY 環境活動の取り組み
当社の排出量の大半を占めるものはScope3の「カテゴリ11: 製品の使用」であると予想しています。特定、集計が困難であるこのカテゴリの排出量を減らすには、環境負荷の低い省エネ機器の販売、普及を図ることが流通商社としての責務だと考え、2008年から前述のグリーンボールプロジェクトに取り組み、賛同メーカー、参加販売店・ユーザーと一緒に環境優良機器の普及に努めてきました。2022年度から前述の「GBP App」を本プロジェクト参加企業に提供し、GHGプロトコルによる総量把握と、GBPプロトコルによる削減貢献量の見える化を支援します。
当社の社内的な排出量の見える化と削減量の進捗管理を行うための専用アプリGreen Ball Project Application = GBP App をグリーンボールプロジェクト参加企業へ無償提供し、川下サプライチェーンの排出量の見える化や削減効果の見える化を支援します。当社社内の排出量を抑制・削減することは当然のことながら、それに加えて、流通商社として、最大の排出源となるScope3「カテゴリ11: 製品の使用」の排出をできる限り抑制するため、精力的に環境優良商品の販売に注力し、さらなる効果を目指します。
「GBP App」の動画はこちらからご覧になれます。