2030年企業ビジョン実現に向けた取組み

当社の競争優位性、ビジネスモデル、事業ポートフォリオとキャピタルアロケーション、2030年企業ビジョンと戦略についてご紹介します。

競争優位性

当社は、生産財の卸売業から始まり、消費財へと事業を拡大。そして国内外に幅広く拠点を築き、全世界のサプライチェーンの持続的発展をサポートし、産業社会の発展に寄与してきました。各事業のサプライチェーン内で顧客から挙がる課題や要望を、当社の人財がいち早く収集し、企画提案力を活かし、粘り強い交渉を行うことで解決しています。これまで培ってきた競争優位性と構築してきたビジネスモデルを活かし、今後も「世界のものづくり」と「豊かなくらし」を支えていきます。

競争優位性

1長い歴史で築いた卸売業としての継続取引先との強固な関係と、業界における高いプレゼンス

  • 70年以上培ってきた多くの継続仕入先、継続販売先との強固な関係
  • 全世界に広がるネットワーク

2低リスクでフレキシブルな事業展開

  • 投下資本が少なく、商品カテゴリー等の変更・拡大を柔軟に行うことができ、様々な市場にアプローチ可能
  • 「受注を見込んだ仕入プロセス」を徹底

3経営理念を体現する「人財力」

  • 創業者のDNAを受け継ぐ営業担当者の情報力と企画提案力、粘り強い交渉力

3つのビジネスモデル

ビジネスと組織の関係を表す図

当社は、生産財や消費財における数多くの取引先との継続的な取引によるストック的で安定したキャッシュ・フローを生み出す「卸売ビジネス」という収益基盤があり、それにアドオンする形で国内外の「エンジニアリングビジネス」や消費財の「ファブレスメーカービジネス」を展開し、売上・利益を積み上げてきました。結果として、現在当社には卸売、エンジニアリング、ファブレスメーカーという3つのビジネスモデルがあり、各事業で展開しています。

※「ファブレスメーカー」は家庭機器のPB商品売上高、家庭機器の「卸売」はPB商品以外の売上高を指しています。

卸売

取引先との信頼関係を基盤に安定したキャッシュ・フローを創出する基幹ビジネス。仕入先メーカーの販売代行、販売先の購買支援を担い、双方の課題を解決。投下資本が小さく、資本収益性が高い。

機械工具業界では、仕入先メーカーと、地域に根差した中小の販売店、最終購入者であるユーザー(中小製造業)が存在します。ユーザーにとって、数多くのメーカー、商材の中から求める設備を見つけ出すことは簡単ではなく、販売店も膨大な商品情報の中から最適な提案をするのは困難です。仕入先メーカーも、個別の商品がどの販売店に売れるのかを把握することは難しく、また個々の販売店との取引は代金回収業務も煩雑になります。山善がメーカーと販売店の間に入り、豊富な商品知識やノウハウでユーザーのニーズに合う商品を販売店に提案することで、販売店からユーザーへ最適な商品を販売することができ、仕入先メーカーにとっては、煩雑な販路が集約され営業・代金回収の手間もなくなるというメリットがあります。

山善・仕入先メーカー・販売店・ユーザーの関係を表す図

エンジニアリング

複数の国・地域における現地密着の販売体制と高度なエンジニアリング機能でライン設計、アフターサービス等ユーザーのものづくりをトータルでサポート。付加価値提案により粗利益の確保が見込める。

エンジニアリングとは、ユーザーから当社社員が直接、ニーズを吸い上げ、要件定義から生産ラインの設計、生産設備の調達、据え付け、稼働、メンテナンスまでワンストップでサポートする体制を指します。海外では、販売店を介さず生産設備を直接当社が販売しています。海外15カ国・地域に71カ所※の事業所を展開しており、1,200名ほどの海外スタッフのうち、およそ330名がエンジニアで、高度なエンジニアリング機能をグローバルに展開しています。このビジネスモデルは、提供価値に見合う価格設定としているため高収益であり、また今後も成長が見込まれるため、現在は国内でも大手ユーザーや新規業界等を中心にこの分野を強化しています。

※生産財関連事業のみの数値

山善・仕入先メーカー・ユーザーの関係を表す図
事業所数:2025年3月末時点(生産財関連事業のみの数値)
人員数:2025年3月末時点

ファブレスメーカー

消費者や販売店のニーズを知り尽くした、営業経験のある当社MD(マーチャンダイザー)が、裁量を持ってスピーディーに企画開発を行い、短期間で商品化が可能。粗利益率が高く、ファブレスであるため低リスク。

家庭機器事業の売上の約60%を占め、当社のMD(マーチャンダイザー)が販売データや、SNS・クチコミ情報から消費者ニーズを分析し、それをもとに企画、デザイン、開発、品質管理等を行い、海外の協力工場で生産した商品を、家電量販店、通販、EC(自社・出店)等のチャネルを通して、消費者の皆様にお届けします。営業経験があり消費者・販売店のニーズを知り尽くしたMDの目利き力と機敏な開発体制で素早く市場へ新商品を投入できるため商機を逃すことが少なく、1人当たりの商品展開数も多いのが特徴です。

MDから多様な販路への流れを表す図

事業ポートフォリオとキャピタル・アロケーション

山善グループの各ビジネスにおける拠点・商品・利益構成と、非財務・投下資本・資本収益性の特徴を一覧化した分析表

人的資本を最重要アセットに据え、最適なキャピタル・アロケーションを目指す

1非財務資本

当社グループにおけるキャピタル・アロケーションの要諦は、人材の最適配置、人的資本投下の最適化にあると考えています。例えば、卸売ビジネスの持続的な発展には、多くの仕入先メーカーと販売先様との関係性の深化が不可欠であり、それを実現することができる人材をいかに育成し適切に配置するか、海外におけるエンジニアリングビジネスの持続的な発展には、技術に対する知見を有し、異文化に飛び込み活躍できる人材をいかにして育成、あるいは調達し配置するかが競争優位性の確立に大きく影響を及ぼします。

2財務資本

次に、当社グループの事業の多くが資産回転型ビジネスであるため、シェア拡大にあたり資金の制限を極小化するべく運転資本回転率の向上を追求してきました。その結果、運転資本(WC)は最適化され、WCがマイナス値のビシネスも存在します。昨今は、卸売ビジネスにおいて積極的にデジタル、物流投資を推進することで、人的資本の再配分、つまり非財務資本から財務資本への置換により、貴重な人的資本の調達を推進しています。この取組みにより、卸売ビジネスの一時的な資本収益性を多少犠牲にしてでもビジネスの持続可能性を高め、かつ、良質な売上の拡大により利益額の拡大を図り、中長期的な資本収益性の確保を目指します。

2030年企業ビジョンと戦略

2030年企業ビジョンの位置付け

2030年企業ビジョンに向けた山善のロードマップ。2022年から2024年にかけて中期経営計画「CROSSING YAMAZEN 2024」を推進し、2025年以降、段階的に収益性向上を目指す流れを示す

2030年企業ビジョンを実現するための戦略と施策の全体像

企業ビジョンを達成するためのピラミッド型フレームワーク図。PURPOSE、VISION、STRATEGY、TACTICSの階層で構成され、全社戦略や営業戦術が示されている

2030年企業ビジョンを実現する上での重要課題

山善を取り巻く2030年の世界観

5つの主要な社会変化要因。1. 脱炭素の要求の高まり、2. デジタル化・スマート化の進展、3. 消費行動の変化、4. 国内外の経済変動、5. ガバナンスの要請拡大

2030年の世界観から導き出した重要課題

働きがいのある職場、デジタル化による顧客価値最大化、グリーンビジネス拡大、持続可能な調達・供給、ガバナンス体制確立の5つの重点施策を示す図。

重要課題をもとに、4つの機能戦略を策定