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山善「第1回 ものづくり産業 業種別課題と対策調査」

日本の産業構造を支えるものづくり産業の回復と成長に向けて
ものづくり企業主要7業種計700社の直近の課題と対策を調査

山善「第1回 ものづくり産業 業種別課題と対策調査」

ものづくり産業全体で「直面している課題がある」7割以上
課題1位は「人材不足への対応」、その対策は「正社員の採用対象層の拡大」がトップ
直近では「エネルギー価格高騰への対応」「AI活用」「人件費高騰への対応」が課題に浮上!
対策実施企業の4割以上が「成果が出ていない」
業種別では『一般機械』『電気機械』は「IT活用/DX推進」が課題1位に
企業規模・海外取引有無ごとでもギャップが浮き彫りに・・・

 
 
 ものづくり商社のリーディングカンパニーである株式会社山善(本社:大阪市西区、代表取締役社長:岸田貢司)は、日本の産業構造を支えるものづくり産業の回復と成長に向けて、ものづくり産業7大業種別の直近の課題と解決策について、ものづくり産業に携わる管理職以上の責任者700人を対象に調査した「第1回 ものづくり産業 業種別課題と対策調査」の結果を発表いたします。
      

Ⅰ.ものづくり産業が直面する直近3年以内の課題と以前からの課題

◆業界全体で、71.0%が以前から直面している課題があると回答[図1]。
◆直近3年以内に直面するようになった課題と以前から直面している課題のランキングの変化を見るとTOP3は同順位である一方、「エネルギー価格高騰への対応」「AI活用」「人件費高騰への対応」が浮上しています[図2] [図3]。
◆さらに、直近3年以内の課題に「物流費高騰への対応」(以前から直面している課題では11位)や「カーボンニュートラルへの対応」(以前から直面している課題では13位)がTOP10以内にランクインしていることが分かりました。




【調査トピック一覧】

Ⅰ.ものづくり産業が直面する直近3年以内の課題と以前からの課題

・業界全体では71.0%が以前から直面している課題があると回答。
・課題としては直近3年以内・以前から共に「人材不足への対応」がトップ。直近3年以内では「エネルギー価格高騰への対応」「AI活用」「人件費高騰への対応」が上位に浮上。
・直近3年以内の課題に「物流費高騰への対応」(14.6%)や「カーボンニュートラルへの対応」(12.6%)がTOP10以内にランクイン。

Ⅱ. ものづくり産業が直面する直近の課題トップ5に向けた対策について

・課題1位「人材不足への対応」に向けた対策は「正社員の採用対象層の拡大」がトップに。「外国人人材・女性従業員の雇用拡大」実施企業も。
・課題2位「IT活用/DX推進」に向けた対策は「専門人材の確保」がトップに。「シニア人材の活躍」「従業員の知識・スキルの底上げ」も重要に。
・課題3位「原材料価格高騰への対応」に向けた対策は「販売製品の値上げ」がトップに。「サプライチェーンの見直し・分散」などもランクイン。

Ⅲ.「対策の成果」について

・対策を実施していると答えた企業のうち、4割以上が「成果が出ていない」と回答。

Ⅳ.「対策が実施できない理由」について

・対策実施状況については、2割以上が「対策は実施できていない/わからない」。
・実施できていない課題は「後継者不足への対応」がトップ、2位「サプライチェーンの安定化」。さらに「グローバル化」に関連した課題も対応できていないことが明らかに。
・課題への対策ができていない理由は「人手」「専門人材」「資金・予算」が足りない

Ⅴ.従業員数別、海外取引有無別での比較

・大企業ほど「カーボンニュートラルへの対応」や「IT活用/DX推進」「AI活用」が課題に。
・海外取引ありの企業の方が「IT活用/DX推進」や「AI活用」を課題と感じている企業が多い。

Ⅵ.ものづくり産業7大業種別の課題とその対策

・『一般機械』は、直近の課題として「生産現場の環境改善」がランクイン。「IT活用/DX推進」が課題と回答した割合が全業種で最も高く約4割。
・『電気機械』は、直近の課題として「AI活用」「エネルギー価格高騰への対応」が浮上。「IT活用/DX推進」の割合が『一般機械』に次いで高い結果に。
・『輸送用機械』は、直近の課題として「原材料価格高騰」「エネルギー価格高騰」への対応が浮上。「AI活用」「カーボンニュートラルへの対応」の割合が全業種で最も高い結果に。
・『鉄鋼業』は、直近の課題として、「AI活用」「カーボンニュートラルへの対策」がランクイン。「人件費高騰への対応」も浮上し、最多の対策は「販売製品の値上げ」。
・『化学工業』は、「カーボンニュートラルへの対応」の割合が『輸送用機械』に次いで高い。一方、直近では「AI活用」「カーボンニュートラルへの対応」が浮上。
・『非鉄金属』は、「エネルギー価格高騰」「業務効率化、生産性向上」「設備関連の資金調達」の3つの課題が全業種で最多。「エネルギー価格高騰への対応」「AI活用」も浮上。
・『金属製品』は、「人材不足」「原材料価格高騰」「人件費高騰」「後継者不足」への対応を課題とする割合がどの業種よりも高い結果に。



・調査対象:全国の20~69歳の男女のうちものづくり産業(一般機械、電気機械、輸送用機械、鉄鋼業、化学工業、非鉄金属、金属製品)に携わる管理職以上の責任者 700人
・調査方法:インターネット調査
・調査期間:2024年8月2日(金)~8月5日(月)
※構成比(%)は小数第2位以下を四捨五入しているため、合計しても100にならない場合があります。



【調査結果詳細】

Ⅱ.ものづくり産業が直面する直近の課題に向けた対策

 ものづくり産業が直近3年以内に直面するようになった課題で上位5項目にについて、企業がどのような対策を実施しているのかをお聞きしました。

◆課題1位「人材不足への対応」に向けた対策「正社員の採用対象層の拡大」がトップに。
「外国人人材・女性従業員の雇用拡大」実施企業も

 直近3年以内に直面するようになった課題1位として挙がった「人材不足への対応」について、実施している対策として、「正社員の採用対象層の拡大」(36.4%)がトップとなりました[図4]。
 次いで、「定年の引き上げ、シニア人材の再雇用」(30.8%)、「専門人材の確保(採用・委託含む)」(26.2%)が上位に挙げられています。また、「外国人人材の雇用拡大」(7位16.4%)や「女性従業員の雇用拡大」(9位14. 0%)を実施する企業も見受けられました。




◆課題2位「IT活用/DX推進」に向けた対策
「専門人材の確保」がトップに。「定年の引き上げ、シニア人材の活躍」「従業員の知識・スキルの底上げ」も重要に

 課題2位に挙がった「IT活用/DX推進」については、「専門人材の確保(採用・委託含む)」(35.6%)が実施している対策のトップとなりました[図5]。
 「定年の引き上げ、シニア人材の再雇用」「従業員の知識・スキルの底上げ」(同率19.2%)も5位に入っており、DX推進においても人材確保が重要といえそうです。




◆課題3位「原材料価格高騰への対応」に向けた対策
「販売製品の値上げ」がトップに。「サプライチェーンの見直し・分散」などもランクイン

 課題3位として挙がった「原料価格高騰への対応」に向けた対策は、「販売製品の値上げ」(37.1%)がトップとなりました[図6]。約4割の企業が値上げによってコスト高に対応している様子がうかがえます。
 次いで「製造工程の見直し」(18.9%)、「節電・節水」(16.0%)が上位にランクインしました。また、「サプライチェーンの評価・見直し」(4位14.9%)、「原材料調達先およびサプライチェーンの分散」(6位10.9%)など、取引先についての回答も見受けられました。




◆課題4位「エネルギー価格高騰への対応」に向けた対策
「販売製品の値上げ」がトップ。「再生可能エネルギーの導入」「廃棄物削減」「消費電力の見える化」なども実施

 課題4位として挙がった「エネルギー価格高騰への対応」に向けた対策は、「販売製品の値上げ」(29.1%)がトップとなりました[図7]。次いで、「節電・節水」(25.4%)、「製造工程の見直し」(18.7%)が上位に挙げられています。
 その他、「再生可能エネルギーの導入」(16.4%)や「廃棄物削減」(13.4%)、「消費電力の見える化」(9.7%)など、省エネにつながるような対策も挙がっています。




◆課題5位「AI活用」に向けた対策「専門人材の確保」がトップ。
「対策は実施できていない/わからない」が3割も

 課題5位として挙がった「AI活用」に向けた対策は、「専門人材の確保(採用・委託含む)」(33.8%)がトップとなりました[図8]。
 また、「対策は実施できていない/わからない」が3割となり、多くの企業が対応し切れていない分野であるといえそうです。




Ⅲ.「対策の成果」について

 直近3年以内に直面するようになった課題への対策について成果が出ているかどうか聞きました。


◆4割以上の企業が「成果が出ていない」と回答

 直近3年以内に直面するようになった課題について、何かしらの対策を実施していると回答した人のうち、「成果が出ていない(「あまり成果が出ていない」「全く成果が出ていない」の計)と回答した人は44.1%となりました[図9]。
 対策を実施していても、半数近くの企業が成果を得ることができていない現状がうかがえました。


Ⅳ.「対策が実施できない理由」について

 「対策が実施できていない課題」および「課題への対策ができていない理由」について調査を行いました。

◆対策実施状況について
2割以上が「対策は実施できていない/わからない」

 直近3年以内に直面するようになった課題の対策実施状況について、全ての課題で「対策は実施できていない/わからない」と回答した人は、2割以上いることが分かりました[図10]。


◆実施できていない課題
後継者不足への対応」がトップ、2位「サプライチェーンの安定化」。さらに「グローバル化」に関連した課題も対応できていないことが明らかに

 直近3 年以内に直面するようになった課題について「対策は実施できていない/わからない」と回答した人の割合が最も多かったのは、「後継者不足への対応」(38.1%)でした[図11]。
 同様に「サプライチェーンの安定化」(35.0%)や「グローバル経営の仕組みの整備」(34.0%)「国際競争の激化への対応」(34.0%)など、グローバル化に関する課題についても3割以上の人が「対策は実施できていない/わからない」と回答しています。




◆課題への対策ができていない理由
「人手」「専門人材」「資金・予算」が足りない

 「対策は実施できていない/わからない」と回答した人に対策ができていない理由を聞いたところ、全体の課題TOP5それぞれについての対策へのハードルが浮き彫りになりました。
 「人材不足への対応」については「人手が足りない」(49.0%)ことで対策ができないという悪循環がうかがえます[図12]。


 また「IT活用/DX推進」「AI活用」についても「専門人材が足りない」が1位に挙げられています[図13][図16]。
 「原材料価格高騰への対応」および「エネルギー価格高騰への対応」については、「資金・予算の余裕がない」がトップに挙がりました[図14][図15]。







Ⅴ.従業員数別、海外取引有無別での比較

◆大企業ほど「カーボンニュートラルへの対応」や「IT活用/DX推進」「AI活用」が課題に

 直近3年以内に直面するようになった課題の上位10項目を企業規模別で比較すると、「人材不足への対応」および「原材料価格高騰への対応」は共通して上位に入っている一方で、「カーボンニュートラルへの対応」や「IT活用/DX推進」「AI活用」は、従業員数が多い企業ほど上位にランクインしています[図17]。





◆海外取引ありの企業の方が課題に直面する割合が高い

 直近3年以内に直面するようになった課題を、海外取引の有無で比較すると、海外取引がある企業では「IT活用/DX推進」(30.4%)や「AI活用」(23.9%)が上位に挙がっています。グローバル水準に合わせるためには、DX化への対応が必須といえそうです[図18]。





ものづくり産業に特化した商社に勤務して30年以上。
業界の課題解決に貢献する(株)山善 奥山 真吾による「直近3年以内に直面した課題」と「以前からの課題」の解説

 「以前」から「直近」まで続く課題1位の「人手不足」については、少子高齢化による生産年齢人口の減少が背景としてありますが、実はコロナ禍前後で、新たな要因が加わったと考えます。正社員としてひとつの企業で定年まで働く終身雇用を目指す方よりも、コロナ禍後は「スキルアップのために、転職するのもひとつの方法だ」と考える人が、より増えているように感じます。優秀な人材を流出させず確保するには、やはり賃金アップが重要であり、それが6位の「人件費高騰」にも繋がっているようです。
 6位から4位に上がった「エネルギー価格高騰への対応」については、ロシアのウクライナ侵攻を背景に、2022年の春ごろから法人の電気代が高騰し、経営を圧迫していることが理由であると考えます。当社でも顧客企業から省エネ設備のお問い合わせが非常に増えています。
 8位から6位に上がった「人件費高騰」については、若い人材の賃金は上がっているのに中堅〜ベテラン社員の賃金が上がらないため人材が流出するケースも起きているようです。また、人材が流動的なため社員に企業文化が根付かない、企業文化が浸透しないため人材が固定しないという悪循環になることもあります。
 一方、以前の課題の4位「業務効率化・生産性向上」が直近3年以内では8位に下がり、「AI活用」が7位から5位に上がってきているのは、ここ数年でAI技術が進化したことが理由です。以前は「業務効率化・生産性向上」の方策が曖昧だったところ、AI活用という対策が見えてきたと考えられます。一方で、AI活用には専門人材が不可欠であり、その確保が課題となっています。
 以前は課題になっていなかったのに、直近3年以内の課題で8位に上がってきたのが「物流費の高騰への対応」です。2024年4月にトラックドライバーの労働時間の上限が規制されたことにより、輸送能力が不足する「物流の2024年問題」が起きています。それまでは、物流側よりも荷主側の立場が強かったのですが、近年は逆転しました。また、倉庫業では環境改善、省力化が進められています。
 ランク外から10位に上がってきた、「カーボンニュートラルへの対応」にも注目したいところです。近年は、CO2削減やカーボンニュートラルに取り組んでいない企業は各方面から評価を得にくく、企業ブランドの低下を招くことに直結します。
 具体的には、取引先からも消費者からも敬遠される、資金調達の場面で優遇されにくくなるということです。また、求職者や、在籍中の社員から「社会的責任を負わない会社だ」と判断された場合、人材の確保が難しくなります。
 なお、カーボンニュートラルへの対応は、大手企業を中心に広がってきています。その理由は、欧米をマーケットにする場合はカーボンニュートラルへの対応が必須となるからです。中小企業や、アセアンでビジネスを展開している企業は、まだ対応に消極的なところが多いようです。



【担当者紹介】
株式会社山善 産業ソリューション事業部 戦略企画部長 奥山 真吾 

 1992年の入社以来、営業活動に従事した後、2021年10月より機工事業部 マーケティング部 副部長に就任。プライベートブランド商品の開発等に注力。2023年4月より現職。商品開発の他、仕入先メーカーの選定、展示会やウェビナーの企画・立案、カタログ制作、商品のプロモーション等の職務に当たっている。




Ⅵ.
ものづくり産業7大業種別の課題比較

◆『一般機械』『電気機械』は「IT活用/DX推進」がトップ。「原材料価格高騰への対応」が『一般機械』と『鉄鋼業』以外の業種で2位。『輸送用機械』は「AI活用」、『金属製品』は「人件費高騰への対応」に対し、多業種と比べ課題を抱えている

 業種別で直近3年以内に直面するようになった課題を比較しました。
 『一般機械』『電気機械』では「IT活用/DX推進」と答えた人の割合が最も高く、その他5業種では「人材不足への対応」が最も高い課題となりました[図19]。
 「原材料価格高騰への対応」が『一般機械』と『鉄鋼業』以外の業種で2位となっていますが、『一般機械』(13.0%)では7業種の中で最も順位の低い5位となっており、業種間でも差が見られます。また、『輸送用機械』では「AI活用」、『鉄鋼業』と『金属製品』では「人件費高騰への対応」が3位にランクインしています。




■(株)山善 産業ソリューション事業部 奥山による解説
全体を見て、一般機械業種の一番の課題は「人材不足」ではなく「IT活用/DX推進」という意外な結果でした。金属製品業種の3位「人件費高騰への対応」については、これまで人件費を抑えていた中小企業が、人材確保のために改善を考え始めたことのあらわれだと思います。
全業種において「IT活用/DX推進」「AI活用」を課題だと感じている企業が多いのは、ここ数年でITやAI技術が急激に進み、業務改善に活かす可能性が広がったことによります。



【一般機械】

直近では「生産現場の環境改善」が浮上。「IT活用/DX推進」が課題と回答する割合が全業種で最も高く約4割。対策は「専門人材の確保」が1位。

 『一般機械』においては、直近3年以内に直面するようになった課題として「IT活用/DX推進」(39.0%)と答えた人の割合が最も高い結果となりました[図21]。他の業種と比較すると、「原材料価格高騰への対応」(13.0%)「人件費高騰への対応」(10.0%)を直面する課題と答えた人は少なく、コスト高による影響は比較的少ない業種といえそうです。
 直近3年以内に直面するようになった課題では、「AI活用」「業務効率化、生産性向上」の順位が上昇[図21] [図22]。さらに、「生産現場の環境改善」(以前から直面している課題では12位)がTOP10に浮上しています。






◆直近の課題1位「IT活用/DX推進」への対策は、専門人材など人材確保が重要に

 「IT活用/DX推進」について『一般機械』を取り扱う事業者が実施している対策を聞くと、「専門人材の確保(採用・委託含む)」(33.3%)が最も高い結果となり、次いで2位「正社員の採用対象層の拡大」(28.2%)、3位「定年の引き上げ、シニア人材の再雇用」(23.1%)、4位「外部人材の積極的な登用」(20.5%)と、人材に関連する対策が上位に挙がりました[図23]。ものづくり業界全体と同様に、「IT活用/DX推進」においては人材確保が重要となってきそうです。




■(株)山善 産業ソリューション事業部 奥山による解説
コロナ渦を経て、一般機械の業種は長納期化が顕著になっています。人材不足により、納期内に製造できる体制がとれていないことが原因です。直近の課題上位(1、2、同3、6位)が軒並み、「人手不足の中で、どう生産性を維持するか」に関連している理由でもあります。同3位「エネルギー」、5位「原材料」など「価格高騰への対応」については、「値上げ」が一般的にも許容される対策になっています。
一方で、それを繰り返すことで仕入れ先の変更につながる可能性もあることから、「生産性の維持」同様に、全般的な業務の効率化が、解決策として求められています



【電気機械】

直近では「AI活用」「エネルギー価格高騰への対応」が浮上。「IT活用/DX推進」の割合が『一般機械』に次いで高い結果に。対策は「専門人材の確保」が1位。

 『電気機械』においては、直近3年以内に直面するようになった課題として「IT活用/DX推進」(26.0%)と答えた人の割合が、『一般機械』に次いで高い結果となりました[図25]。
 『電気機械』は、他の業種と比較すると「人材不足への対応」(23.0%)を直面する課題と答えた人は少ない傾向となりました。
 直近の課題では、トップ3の変動があったとともに、「AI活用」「エネルギー価格高騰への対応」が以前よりも上昇しています[図25] [図26]。






◆直近の課題1位「IT活用/DX推進」への対策は、人材確保や費用確保が上位に

 「IT活用/DX推進」について『電気機械』を取り扱う事業者が実施している対策を聞くと、「専門人材の確保(採用・委託含む)」(34.6%)が最も高い結果となりました[図27]。次いで2位「正社員の採用対象層の拡大」「銀行やベンチャーキャピタルからの融資を受ける」「製造工程の見直し」(同率19.2%)、5位「政府補助金や助成金の活用」「新しいソフトウェアやデジタルサービス(SaaS)の導入」(同率15.4%)と、補助金の活用や融資など予算に関連する対策が上位に挙がっています。




■(株)山善 産業ソリューション事業部 奥山による解説電気機械の製造設備は、自動化と親和性が高いことが特徴です。さらに言えば、ITやDXを活用しないままだと、自動化によるメリットがあらわれにくいとも言えます。近年は、電子基盤の傷や不良品を見つける判定検査では、AI画像検査機器が一般的になりつつあります。
精度が向上したことと、価格が安くなってきていたことが理由でしょう。



【輸送用機械】

直近では「原材料価格高騰への対応」「エネルギー価格高騰への対応」が浮上。「AI活用」「カーボンニュートラルへの対応」の課題の割合が全業種で最も高い割合に。「AI活用」への対策は「専門人材の確保」が最多。

 『輸送用機械』においては、直近3年以内に直面するようになった課題として「AI活用」(27.0%)、「カーボンニュートラルへの対応」(17.0%)と答えた人の割合がどの業種よりも高い結果となりました[図29]。また、他の業種と比較すると「人材不足への対応」(34.0%)や「働きやすい風土づくり/インナーコミュニケーション」(15.0%)を直面する課題として答えた人が多い傾向が見られました。
 直近の課題では、「原材料価格高騰への対応」「エネルギー価格高騰への対応」が以前よりも上昇しています[図29] [図30]。






◆他業種よりも高い結果となった「AI活用」への対策は、専門人材の確保や採用拡大が上位に

 「AI活用」について『輸送用機械』を取り扱う事業者が実施している対策を聞くと、「専門人材の確保(採用・委託含む)」(33.3%)が最も高い結果となり、次いで2位「正社員の採用対象層の拡大」「予算を別途で確保・管理する」「IT・DXを活用した生産性の向上」(同率18.5%)といった人材に関連した対策などが上位に挙がりました[図31]。




■(株)山善 産業ソリューション事業部 奥山による解説
「原材料価格高騰への対応」が2位に上がった理由ですが、数年ほど前までは原材料や部品のサプライヤーにコスト減を求めてきた企業も、下請法の影響で値上げを受け入れざるを得ないようになりました。3位に「AI活用」、4位に「IT活用/DX推進」が入っていますが、自社で新しい技術を取り入れてコストダウンを図ろうとする意図が見えます。
厳しい安全基準からAI画像検査を採用していなかった自動車工場でも、安全面に影響がない部分に関しては採用が進んでいます。



【鉄鋼業】

直近で、「AI活用」「カーボンニュートラルへの対応」の課題がランクイン。
「人件費高騰への対応」も浮上し、対策は「販売製品の値上げ」が最多。

 『鉄鋼業』においては、「人材不足への対応」(29.0%)や「IT活用/DX推進」(23.0%)が上位に挙がっています[図33]。また、直近3年以内に直面するようになった課題として、「人件費高騰への対応」(21.0%)、「エネルギー価格高騰への対応」(20.0%)が上昇[図33] [図34]し、「人件費高騰への対応」は『金属製品』に次いで高い結果となりました。さらに、「AI活用」(以前から直面している課題では14位)、「カーボンニュートラルへの対応」(以前は11位)がTOP10に入りました。






◆直近3年以内に浮上した「人件費高騰」への対策は、「販売製品の値上げ」が1位に

 「人件費高騰への対応」について『鉄鋼業』を取り扱う事業者が実施している対策を聞くと、「販売製品の値上げ」(28.6%)が最も高い結果となりました[図35]。次いで2位「製造工程の見直し」(23.8%)、3位「従業員の知識・スキルの底上げ」(19.0%)や、4位「サプライチェーンの評価・見直し」「給料・福利厚生等の改善」(同率14.3%)に取り組む様子も見られました。




■(株)山善 産業ソリューション事業部 奥山による解説
以前、鉄鋼の工場は他の業種に比べて大量のCO2を排出してきました。しかし現在は、取引先からも社会からも脱炭素化が求められており、「カーボンニュートラルへの対応」には注目が必要です。
鉄鋼業の各企業は、直接水素還元技術を使う、ニア・ゼロ・エミッションスチールを開発するなどで対応を進めています。



【化学工業】

直近では「AI活用」「カーボンニュートラルへの対応」が浮上。
「カーボンニュートラルへの対応」が『輸送用機械』に次いで高く、対策1位は「再生可能エネルギーの導入」。

 『化学工業』においては、直近3年以内に直面するようになった課題として、「カーボンニュートラルへの対応」(16.0%)と答えた人の割合が『輸送用機械』に次いで高い結果となりました[図37]。また、「業務効率化、生産性向上」(19.0%)も『非鉄金属』に次いで高い結果となりました。
 以前から直面している課題と直近3年以内に直面するようになった課題のランキングを比較すると、「AI活用」「カーボンニュートラルへの対応」が直近の課題として浮上しています[図37] [図38]。






◆直近浮上の「カーボンニュートラルへの対応」について、実施している対策は「再生可能エネルギーの導入」が1位

 「カーボンニュートラルへの対応」について『化学工業』を取り扱う事業者が実施している対策を聞くと、「再生可能エネルギーの導入」(25.0%)が最も高い結果となり、次いで2位「予算を別途で確保・管理する」「節電・節水」「製造工程の見直し」(同率18.8%)が上位に挙がっています[図39]。




■(株)山善 産業ソリューション事業部 奥山による解説
化学工業も、鉄鋼と同じく原料を扱い、大手企業が多い業種です。工場で多くのCO2を排出すると最終的に環境負荷が高い製品を生み出すことになってしまうため、カーボンニュートラルへの対応が急務となっています。
直近の課題は、3位が「IT活用/DX推進」、4位が「AI活用」。これらについては、各社がどう活用するかを探っている段階です。



【非鉄金属】

「エネルギー価格高騰への対応」「業務効率化、生産性向上」「設備関連の資金調達」の3つの課題の割合が全業種で最多。直近では、「エネルギー価格高騰への対応」「AI活用」も上位に浮上。

 『非鉄金属』においては、直近3年以内に直面するようになった課題として、「エネルギー価格高騰への対応」(24.0%)、「業務効率化、生産性向上」(21.0%)、「設備投資および設備の老朽化への対応のための資金調達」(20.0%)と答えた人の割合がどの業種よりも高い結果となりました[図41]。
 以前から直面している課題と直近3年以内に直面するようになった課題のランキングを比べると、「エネルギー価格高騰への対応」「AI活用」(以前から直面している課題では12位)が直近の課題として浮上しています[図41] [図42]。






◆他業種よりも高い「業務効率化、生産性向上」への対策は、「製造工程の見直し」が1位に

 「業務効率化、生産性向上」が課題と答えた割合は『非鉄金属』が7業種の中で最も高い21.0%でした。実施している対策を聞くと、「製造工程の見直し」(38.1%)が最も高い結果となりました[図43]。次いで2位「技能・ノウハウ等の文書化、データベース化」「稼働状況や生産実績などの見える化」(同率23.8%)、4位「外国人人材の雇用拡大」「従業員の知識・スキルの底上げ」「労働者の安全性と快適性を確保するための作業環境の整備」「機械や設備の状態の把握」「機械や設備のメンテナンス/入れ替え」(同率19.0%)が上位に挙がっています。




■(株)山善 産業ソリューション事業部 奥山による解説
非鉄金属の工場では、電気やガスを大量に使い、スチール以外の様々な金属を溶かしたり変化させたりします。特に近年は、輸入天然ガスの価格が円安の影響で上昇しており、直近の課題で「エネルギー価格高騰」が3位となっているのは、業績に大きく影響しているためだと考えられます。



【金属製品】

「人材不足」「原材料価格高騰」「人件費高騰」「後継者不足」への対応がどの業種よりも高い結果に。
直近では、「エネルギー価格高騰」や「物流費高騰」への対応も上位に浮上

 『金属製品』においては、「人材不足への対応」(36.0%)、「原材料価格高騰への対応」(31.0%)、「人件費高騰への対応」(24.0%)、「後継者不足への対応」(22.0%)がどの業種よりも高い結果となりました[図45]。
 また、以前から直面している課題と直近3年以内に直面するようになった課題のランキングを比較すると、「人件費高騰への対応」「エネルギー価格高騰への対応」「物流費高騰への対応」「AI活用」(以前から直面している課題では13位)が直近の課題として浮上しています[図45] [図46]。






◆他業種よりも高い結果となった「後継者不足への対応」について、実施している対策は、「定年の引き上げ、シニア人材の再雇用」が1位に

 「後継者不足への対応」を課題と回答した割合が7業種で最も高い22.0%になっています。『金属製品』を取り扱う事業者が実施している対策を聞くと、「定年の引き上げ、シニア人材の再雇用」(45.5%)が最も高い結果となりました[図47]。次いで2位「専門人材の確保(採用・委託含む)」「外部人材の積極的な登用」「従業員へのヒアリング、意識調査」「従業員の知識・スキルの底上げ」「通信費や固定費の見直し」「販売製品の値上げ」(同率18.2%)が上位に挙がっています。




■(株)山善 産業ソリューション事業部 奥山による解説
金属製品の業界は中小企業が多いため、中小企業の課題が集約されていると感じます。課題、対策共に上位が人材関連ですが、職人の個人スキルによって業務を進めていることが多いため、定年退職=技術の喪失になる可能性が業界の課題でもあります。
また職人は、他の会社に行っても技能を活かすことができるため、転職しやすいのも企業にとっては課題となっています。



【ものづくり産業の課題に対する山善のサービス】

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 「製造現場にちょうどいいデジタルを」をテーマにした、ものづくり企業向けの複合型 SaaSプラットフォームです。図面管理や不良記録が一元で管理できるほか、2024年9月から新たに、品質関連書類の作成をサポートし、クラウドで一元管理できる「QC文書管理」と日報業務の集計作業を自動化できる「日報管理」のサービスが追加されました。



◆世界最先端の協働ロボットを一堂に試せる 「協働ロボットテストラボ」

 トータル・ファクトリー・ソリューション支社は、2024年8月に協働ロボットトライアル施設「協働ロボットテストラボ」をオープンしました。ものづくり産業の人手不足が深刻化する中、作業者と同じ空間で動かすことができる協働ロボットの需要は日々高まっており、ロボットメーカーからシステムインテグレーター(SIer)、ものづくり企業まで幅広い企業にご活用いただく“共創の場”となっています。


◆使用場所やシーン、牽引重量によってお選びいただける「AMR(自律型搬送ロボット)」

 産業ソリューション事業部では、「横持ち搬送」の自動化・省人化を進めるためのAMRを、使用場所や主な利用シーン、牽引重量にあわせてご用意しています。


◆最適なファクトリーソリューションを提供
AI画像検査装置『EYEbeGenesis』シリーズを展開

 自動化・省人化ニーズの大きい製造業において、「画像×オートメーション」の商品がトレンドになる中、AI画像検査装置『EYEbeGenesis』シリーズを2022年9月より展開しています。第3世代の最新AIを搭載し、少ない情報でAI構築ができる新技術を持ちながら、オールインワンのパッケージを低コストで導入可能な同シリーズを、当社が持つロボットを含む周辺装置のインテグレート機能も併せてご提供することで、ユーザーに最適なファクトリーソリューションの提案を実現します。



■ 株式会社山善について

 山善は工作機械、産業機器、機械工具など世界のものづくりを支える「生産財」と、住宅設備機器、家庭機器など豊かなくらしを提供する「消費財」を幅広く取り扱う専門商社として、既存の枠にとらわれることなく、グローバルに新たな価値を創造しています。
 今後も、パーパス「ともに、未来を切拓く」のもと、世界のものづくりと豊かなくらしをリードしてまいります。

会  社  名    株式会社山善 YAMAZEN CORPORATION
創  立    昭和22年(1947年)5月30日
株式上場    東京証券取引所 プライム市場
営業拠点    大阪、東京、北関東・東北(埼玉)、名古屋、九州(福岡)、広島ほか国内55事業所、海外現地法人16社(69事業所)
従業員数    3,276名(連結:2024年3月31日現在)
             

以上

■本件に関するお問い合わせ先
【報道関係の方】
広報・IR室
TEL 06-6534-3095 / FAX 06-6534-3280
E-Mail info07@yamazen.co.jp

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