物流戦略
重要課題である「持続可能な調達・供給の実現」に向け、全社戦略として「物流戦略」を掲げ、推進しています。サプライチェーンの円滑化を担う専門商社にとって、物流機能の整備・拡充は、極めて重要な経営課題です。喫緊のドライバー不足対応や環境負荷低減などの課題解決が求められる中、ロジスティクスの効率性やサービス力を高める取組みを開始し、共同輸配送なども視野に入れた次代の物流システム確立を追求していきます。
基本方針
物流業務の効率化とサステナビリティへの貢献
eコマースやデリバリーサービスなど、急速な消費行動の変化や、燃料、人件費の高騰、また一方では、AIに代表されるIT技術の進化などにより、物流に求められる機能や効率性の要求レベルは格段に高まりつつあります。物流においても、庫内作業から輸配送に至るまでIoTによるマテハン稼働や配送指示など、自動化・省人化の潮流は著しいものがあります。また、ドライバーの労働時間制限に伴う長距離輸送手段の見直しや、倉庫・輸配送に伴うCO2排出量の削減、災害を想定したBCP対策など、持続可能な物流ネットワークの構築が強く求められています。当社グループはこうした中長期のトレンドを踏まえ、2030年のありたい姿からバックキャストする形で3ターム全9年の物流戦略を策定し、現在その取組みに経営資源を積極投入しています。
目指す姿と戦略の全体図
山善の物流戦略において目指す姿は“特定業界の輸配送プラットフォーマー”となることであり、それは当社が強みとする各業界を横断的に束ねることを指しています。2030年に実現することを目指し、3タームに分けて物流戦略を策定しています。第1タームで掲げている「物流CROSSING」、第2タームで掲げている「ヤマゼンロジスティクスのプロフィット化」はいずれもその準備を兼ねており、物流拠点、輸配送網をフルに活用するなど、スキーム確立に向けて取組みを進めています。

第1ターム事業部間「物流CROSSING」(2022~2024)の取組み

第1タームは順調に進捗し、全国に展開する生産財ロジス・家庭機器ロジス・住建デポの全122拠点を部門間で共有し活用することで、各事業部の強みをシェアしあう取組みを進めました。「デポ」共有化については岡山を皮切りに金沢、仙台、札幌、静岡へと展開。配送距離の短縮とサービスレベルの向上を実現し、「点ではなく面」でカバーすることができるようになりました。引き続き、さらなるCROSSINGを推進するとともに、物流DX、環境負荷低減についても注力していきます。
TOPICS 01 LMS・WMSの導入による物流コストの削減(実績)とサービスレベル向上

当社はLMS(統合物流管理システム)・WMS(倉庫管理システム)の活用を進めており、2025年3月時点で8拠点への導入が完了しました。ロジス東京(北本市)では移転前と比較して、ピッキング生産性が約2.3倍になり、誤出荷は約3分の1に減少。マテハン導入効果と合わせて、倉庫内人員は約25%抑制できました。ロジス足利(足利市)では適切な梱包計算により、梱包個数が約30%減少し、運賃コスト削減へとつながりました。また、作業の標準化により、作業者の早期戦力化が可能となりました。梱包明細の添付によって、内容物が開梱前に分かるようにするなど、サービスの向上も実現しています。今後全倉庫へ導入を進め、生産性向上とコスト抑制を目指していきます。
TOPICS 02 ロジス大阪を2025年1月より本格稼働

西日本のものづくり産業を支える最重要物流拠点「ロジス大阪(東大阪市)」は2025年1月より本格稼働いたしました。庫内物流の自動化を推進するために、自動倉庫やプロジェクションマッピング、AMR(自律走行搬送ロボット)などの従業員の成熟度を問わない最先端のシステムを導入しており、商品の保管から出荷までの一連のプロセスが効率化され、少ない人員でも作業が可能となるとともに、作業スピードと品質の向上を図っています。また、業界の慣習である“五月雨受注”に対し、当社が創立以来70年以上続けている納品先ごとに商品をまとめる「おまとめ配送」を業界に先駆けて自動化し、ロジス大東(大東市)と比べ「おまとめ配送」作業に係る労力が約5分の1となり業務効率を大幅に改善しました。さらに東大阪という全国でもトップクラスの中小工場(町工場)が集積する立地を活かし、自社のトラックで業界他社の荷物も一緒に運ぶことで、業界全体の輸送コストとCO2の削減を両立する「共同輸配送」を当社として初めて実施していきます。
TOPICS 03 ヤマゼンロジスティクス株式会社は「株式会社ロジライズ」へ

当社のグループ会社であるヤマゼンロジスティクス株式会社は、2025年4月1日より「株式会社ロジライズ」に社名変更し、併せて、本社所在地を東大阪市に移転いたしました。ヤマゼンロジスティクスは、1993年の設立以来、山善のグループ会社として生産財と消費財双方の商品特性に合わせた物流システムを構築し、高度な情報機能と全国的なネットワークによる物流展開を行ってきました。今後は「ヤマゼンロジスティクスのプロフィット化」をさらに推進するため、山善の取り扱い商品の在庫保管・配送だけでなく、メーカーや同業の機械工具商など、新たな荷主企業からの倉庫運営、輸配送業務を受託できる体制の構築を進めます。そして、様々なニーズに応じた「常にお役に立てるロジスティクスパートナー」を目指していきます。
※2025年4月時点の情報です。