モーレツ対談 歴史に学び、未来へ

株式会社 山善 代表取締役社長(当時) 吉居 亨氏
関西テレビ放送株式会社 代表取締役社長 福井 澄郎氏
大阪発の「元気」を発信 現場視点に徹し、イノベーションを実現
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吉居

 山善は今年5月に創立満65周年を迎えますが、この記念事業の一環として2月に創業以来の歴史をまとめた「山善ミュージアム」をインターネット上に開設しました。創業者・山本猛夫をモデルとした人気ドラマ「どてらい男」のコンテンツも掲載していますが、今回、こうしたご縁でドラマを企画・制作し、全国に放送された関西テレビの福井社長様とお会いする機会を得、大変光栄です。

福井

 私こそ、「モーやん」に薫陶を受け、熱意を継承されている吉居社長様から「元気」や「勢い」を頂ければと楽しみにしていました。ところで、ドラマ「どてらい男」は1973年10月から全国ネットでスタート。放映期間は77年3月までの3年半にわたり、最高視聴率38%を記録する超人気番組となりました。現在では、連続ドラマの放映期間は1クール3カ月間が基本で、視聴率も15%を超えればヒット作と言えますので、まさに桁はずれの人気番組でした。

吉居

 ドラマのPR効果は絶大で、「山善」という社名は知らなくても、「どてらい男の会社」として全国に知れ渡るなど、テレビメディアの影響力を実感しました。創業者は「モーやん」の愛称で慕われ、幾多の試練や困難を乗り越えたバイタリティと商才、そして独特の語録は社内外の多くの方に勇気や元気を与えました。今でも創業者の生き方や語録を励みにする方々も多く、話題になります。福井社長様がテレビ業界に入られたのも同時期ですね。

福井

 私は「どてらい男」が放映される3年前の1970年に関西テレビに入社し、報道局で事件報道やドキュメンタリー制作を担当していました。70年代は世相的にも、大阪万博やドル・ショック、浅間山荘事件など時代の変化を象徴する出来事が相次ぎました。テレビの世界も白黒からカラーテレビに、そしてビデオの普及など技術革新が続き、常に新しいものにチャレンジする日々で、時代そのものが変化の連続で活気に満ちていましたね。

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吉居

 当時、私はマザーマシンと言われる工作機械の営業を担当していましたが、ものづくりの分野でもNC(数値制御)工作機械の普及など、日々進化・発展が続きました。勢いがあり、期待感に満ちた時代だったと言えます。時代の変化に対応するには、「現場主義の徹底」が大事です。私はかねてから、「現場を歩き回る経営」を提唱し、現場をしっかりと歩き、生の声を聞き、実情や問題点を正確に把握することの大切さを社員に伝えています。現場発の情報が大事です。テレビの世界も同じですね。

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福井

 真実や事実、その背景をいかに伝えるかが、我々放送メディアの使命であり、役割です。「3・11」東日本大震災から一年が経過しましたが、この間、未曾有の大震災にテレビに何ができたのか、何ができるかが問われた一年だったと思います。これからも被災者に寄り添いながら、大震災で起きた事実や現実、支え合う姿や復旧・復興への歩みを、いつまでも伝え続けるとともに、「防災」や「減災」についてもメディアがしっかりと勉強し、信頼され役立つ災害情報を発信していくことが必要だと考えています。ところで、大震災やタイの大洪水、円高、欧州債務危機など、日本経済も大きな試練に直面していますが。

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吉居

 確かに日本経済を足元から揺さぶる状況に直面し、市場や産業構造も大きく変化しています。従来と同じやり方や考え方では通用しません。当社が扱う商品も時代とともに進化、市場変化に対応した商品開発や仕組みづくりが不可欠です。機械・工具などの生産財分野では、環境ビジネスや専門展等の提案営業を強化。また、海外でも早い段階から各地に現地法人や拠点を展開し、地域密着の販売・サービス活動が存在感を示しています。また、住宅機器や家庭機器などの消費財分野も、商材や販路開発に取り組んだ結果、生産財と消費財の専門商社として「バランス力」という強みを発揮、業績に反映しています。特に、昨年は東日本大震災の影響による節電ニーズの高まりから、「YAMAZENブランド」の扇風機が人気を博し、業界トップクラスの320万台を販売、様々なマスコミからも注目されました。大手家電メーカーが扇風機の扱いを縮小する中、地道に商品開発と品質向上に取り組んできた結果で、コタツや調理家電も好調です。また、タイの大洪水で日系企業をはじめ大きな被害を受けましたが、現在では復興に向けた更新需要が本格化しています。ピンチこそチャンス。創業者からも「困難の時こそ、アンテナを張り、知恵を発揮しろ」と教えられました。

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福井

 なるほど、ピンチに直面しても、現場主義に徹し、知恵を発揮することで、チャンスの芽を掴むことができる。今の日本の閉塞した現状を打破するためにも、大事なメッセージですね。

株式会社 山善