家庭機器事業部 eビジネス3部 営業課リーダー

西村 拓也/Takuya Nishimura

家庭機器事業部 第3商品統括部 商品企画3部長

俣野 剛志/Takeshi Matano

(写真左から)

日本の労働者を灼熱の現場から守りたい!

ユーザーボイスと開発のアイデアが生み出したヒット商品

水冷服「DIRECT COOL」

2025.07.25

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地球は温暖化の時代から灼熱化の時代へ。職場での熱中症による死傷者数は、厚生労働省の調査によると2024年は1,257人となり統計上最多数。このような労働災害の増加を背景に、2025年6月からは事業者に対して適切な熱中症対策を取ることが法的に義務づけられた。熱中症の恐れがある現場において重篤化を防止するための対策が必須となったのだ。そんな過酷な環境における救世主として注目を集めるのが、山善の水冷服ブランド「DIRECT COOL」。開発者である俣野剛志と、自社ECサイト「山善ビズコム」で拡販に注力する西村拓也に、それぞれの立場から水冷服への想いを聞いた。

現場にとって最適なワークウェアを

2022年に発売を開始し、着実にファンを増やしている山善の水冷服ブランド「DIRECT COOL」。俣野さんは開発初期から携わっておられるそうですね。

俣野:もともと業務用エアコン、電動工具、エンジン機械関係などの開発をしていたこともあり、それらを扱う現場で必要とされる冷感ワークウェアの開発に着手しました。2018年には、ファン付きウェアシリーズ「KAZEfit」を発売開始。こちらは電動ファンが外気を取り込み、汗が乾く時の気化熱で体を冷やすという仕組みです。室温が適度に保たれている室内で着用すると、かなり快適だと思います。
しかし、本当に過酷な現場だと「暑くて堪らない」という声が多いことも、徐々にわかってきました。気温が高い30度以上の場所で使うと熱風を取り込んでしまう。また、粉塵が舞っている環境、農薬を撒く作業時も、それらを服の内側に吸い込んでしまう、という弱点がファン付きウェアにあったのです。以前から、チラーで冷却した冷水がベスト内を巡るタイプの水冷服はありましたが、ホースが大きな装置であるチラーと繋がれているので身動きが取りづらい。ならば、どんな厳しい環境でも涼しく過ごせて、作業しやすい水冷服を作ろうと開発に至りました。


家庭機器_俣野

開発の俣野は機能だけでなく「毎日の使いやすさ」にもこだわる

冷水で直接体を冷やす水冷服。使用時に必要なのは?

俣野:水を入れて凍らせた専用ボトル(容量650mlまでのペットボトルでもOK)とモバイルバッテリーです。ボトルによって冷やされた水が、水冷服に張り巡らせたチューブの中を循環し身体を直接冷やしてくれます。使用する環境や気温にもよりますが、室温36度、湿度70%の環境でも、最大4.5時間冷却し続けます。


家庭機器_俣野

「DIRECT COOL PREMIUM」は首元と脇下にチューブを通すことで、効果的な「冷やし」を実現

ユーザーの貴重な声をフィードバック

「ベーシックモデル」のほか、「PREMIUM」、「ProPLUS」があり、実は現場の声が開発につながったと聞いていますが 。

西村:入社以来、eコマースの担当として販促に携わっており、現在はECサイト「山善ビズコム」の店長をしています。ウェブに寄せられるレビューはもちろんですが、展示会は実際に現場で使っていらっしゃる方から、生の意見をいただける貴重な場なので、昨年「東京 猛暑対策展」という展示会に参加しました。
「PREMIUM」は太い血管が通っている首元、脇下を効果的に冷やすことができます。「ProPLUS」というのは脇下にはチューブが通っているけれど首元はないタイプ。「ProPLUS」開発のきっかけは、展示会でいただいたお客さまの声でした。「首が冷えると気持ちいいが、現場監督のような動きの少ない業務向きだと思う。作業量が多い人間だと、首の部分が動きを妨げることがあるので脇だけにしてほしい」という声があったんです。これは貴重なご意見だと思い、すぐ俣野部長にフィードバック。そうして完成した「ProPLUS」は着実に売り上げが伸びています。

俣野:水冷服の発売当初は、ホームセンターでの販売をメインに考えていました。でも、いざ発売を開始してみると、ホームセンターに来る方々はファン付きウェア派が多く、水冷服は実はECサイトとの相性が良かった。当社の公式ECサイト「山善ビズコム」の主なお客さまは法人や、個人事業主の方々。中小企業で熱中症対策を検討しておられる方が多数いらして、ニーズがマッチした。「野外の作業中、上半身がしっかり冷やされてかなり快適だった」といった感想や、サイトに寄せられるご意見はたいへん参考になります。実はバイカーの方々にも好評だったり、登山など趣味の場面に愛用いただいている方も多いようです。


家庭機器_西村

eコマースのあらゆる場面に携わる西村も、こだわるのは「生のユーザーの声」

ECサイト「山善ビズコム」を制作する上でのこだわりとは?

西村:ECサイトでは、商品を手に取れないので、ほぼ全ての商品に関する取り扱い説明書をサイトに掲載しています。特に水冷服はその存在を知らない方も多いので、着用する様子を見せる動画を掲載し(動画はコチラ)、実際の着心地などをイメージしていただけるよう工夫しています。また2025年6月1日から施行された労働安全衛生法の規則改正をわかりやすくまとめた関連記事(記事はコチラ)などを掲載し、購買の促進につなげています。

2025年4月には「PREMIUM」に、新色のブラックカモが登場しました。これは俣野さんのアイデアですか?

俣野:これも西村さんからのアイデアです。汚れが目立たない黒っぽい色のアイテムも欲しいとリクエストがありました。また、以前発売したブルーカモが人気だったのですが、展示会に来た方から「やはり自分はスマートな黒色の作業着が好きなので、今度はブラックカモが欲しい」という声があったとも西村さんから聞きました。そこから、しばらく試行錯誤。ブラックのカムフラージュ柄って意外と難しいんですよ。黒の濃淡だけではなく、実は5色を使って微妙な色合いを表現しています。

社会課題を解決するアイデアで、
次なるヒットにつなげたい

「ベーシックモデル」、「PREMIUM」、「ProPLUS」それぞれ、「山善ビズコム」でかなり好調な売れ行きだそうですね。

西村:2025年に関しては、熱中症対策が義務化されたこともあり、企業はこれまで以上に準備をしなければならない中で、全モデル合わせて約5,500着を販売する予定です。6月下旬現在で、すでに半数以上は売れている状況。このペースなら、予定販売数を無事クリアできると思っています。今後は「山善ビズコム」だけで1万着ほど販売していけるよう、規模を拡大していきたい。そのためには、できるだけ俣野部長が参加される展示会に同行して、さまざまなお声を拾って商品開発にフィードバックすることが、私のやるべきことだと思います。

年々、進化を遂げている水冷服、現在地の課題をお聞かせください。

俣野:水冷服を実際に着ると、ほとんどの方が「こんなに軽くて涼しいんですね!」と驚かれます。トレイルランニング用のリュックを模した形状なので、背負ってもあまり重さを感じません。ただ残念なことに、凍らせたペットボトルを入れて冷水を巡らせた状態で試着いただける場面が、なかなかないんです。ですので、メディアの方に着ていただく機会を増やす、さまざまな展示会に参加するなどして、実際に触れていただける機会を増やしていきたいです。

西村:水冷服ってファン付きウェアを使っている方がどんどん乗り換えてもおかしくないポテンシャルを秘めています。なのに、ファン付きウェアと水冷服の検索ボリュームは今のところ10倍以上の差がある。これから認知が広がれば広がるだけ「山善ビズコム」で水冷服を購入してくださる人は増えていくと確信しています。


家庭機器_俣野×西村

「明日のヒット商品開発」に向けて、開発と販促のセッションは続く

ヒット商品を生み出すために、何が必要だとお考えですか。

西村:メディアに取り上げていただくことの多い、煙が少ない焼肉グリル「XGRILL」もそうなのですが、ユーザーのお困りごとを解消できる、山善らしいエッセンスを加えている商品がヒットしています。水冷服もユーザーニーズを聞いて改善していく中で、売れ出した実感があります。俣野部長たち商品企画の皆さんが創意工夫してくださった商品を、これからも一生懸命、発信していきたいと思います。

俣野:好きな言葉のひとつに、渋沢栄一の「無欲は怠惰の基である」があります。ここにある欲とは単なる私欲ではなく、社会をより良くするための欲求です。社会貢献できる商品とは?と考え続け、努力し続けた先にヒットがあるのだと思います。

※このインタビューは2025年6月に行いました。部署名等は取材当時のものです。

家庭機器_俣野
PROFILE
俣野 剛志

家庭機器事業部 第3商品統括部 商品企画3部

1989年の入社から30年、営業畑で活躍。2017年から商品統括部配属となり、電気工具やエンジンの発電機などを企画開発。ファン付きの作業着や水冷服などワークウェア分野にも着手するなどその意欲的な姿勢は衰えを見せない。休日の息抜きは、「アジの梅しそ揚げ」や「肉豆腐」などの手料理を家族にふるまうこと。

家庭機器_西村
PROFILE
西村 拓也

家庭機器事業部 eビジネス3部 営業課

2009年の入社以来、eビジネス部に所属。インセールス、仕入れ責任者、ECサイトの営業を経て、2022年に立ち上げた自社ECサイト「山善ビズコム」の店長に。サイト更新、キャンペーン運用、広告運用など運営の全般を担う。休日は子どもとの時間を大切にしながら、合間を見てはIT系の学びに勤しんでいる。

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