製造・物流現場における搬送の自動化を目指し、AMR(自律搬送ロボット)の開発を進める山善が、大阪・城東地区のUR森之宮団地で行われた実証実験に参加した。本実証は、株式会社竹中工務店が主体となり、団地内におけるラストマイルの移動というテーマに向き合うもの。共同実施企業の1社として参加した山善は、AMRを活用した、マイクロモビリティの牽引・移動を担った。実証実験を通して見えた新たな可能性と、山善が提案する自動化のかたちについて、産業ソリューション事業部の山中裕貴に聞いた。

実証実験に関するニュースリリースはコチラから
https://www.yamazen.co.jp/news/entry-2921.html

人に代わって「運ぶ」役割を担うAMR

まずは、山善がAMRなどロボット開発に力を入れている背景から教えてください。

製造・物流現場における一番大きな課題は、人手不足です。「人が物を運ぶ」という作業は、生産性という面では付加価値を生みにくい一方、現場からなくすこともできません。だったら、そこはロボットに任せて、人には別の仕事をしてもらえばいい。ただし、すべてを一気に自動化しようとすると、コストも膨らみますし、工場のレイアウトを変えなければならないこともあります。だから、「運ぶところだけでも自動化しませんか」というスモールスタートをご提案しています。1台、1工程からでいいので、自動化に着手してもらうことが、人手不足という課題を解決するためのスタート地点です。

開発している「YAMAZEN AMR」は、どのようなニーズから生まれたのでしょうか。

日本の工場や倉庫は、既存敷地内での増築(建て増し)が多く、建屋内の通路幅も狭いため、屋外搬送用の大型AMRでは、建屋内に入れません。「もう少し小さく、工場のラインの近くまで入れるものが欲しい」という声が多く聞かれたんですね。「小さいこと」「屋外を走れること」のニーズを背景に、スズキ株式会社の多目的電動台車「MITRA」を足回りとして採用したオリジナルAMRの開発を、2024年4月から本格的に進めてきました。2027年秋の販売を予定しています。

具体的に、どんな特長を持った製品なのでしょう。

「YAMAZEN AMR」の牽引重量は約500kgです。電動車椅子の技術を使っているので溝や段差、傾斜、アスファルトの凹凸といった、一般的なAGVが苦手とする悪路にも対応します。小雨程度なら雨に濡れても平気ですし、「屋外を走れる」ことで中と外をつなぐ搬送が可能に。これまで人手で運んでいたエリアの自動化ツールとして期待を集めています。今年9月に参考出展した『国際物流総合展2026』でも、自動車関連、造船などさまざまな業種の方から建屋間搬送での活用に好評をいただきました。


『国際物流総合展2026』出展時のデモの様子

『国際物流総合展2026』出展時のデモの様子

   
●「国際物流総合展」で行った自動化提案は、製造業向けお立ち情報サイト「ものづくり研究所」で掲載しています。

詳しくは画像をクリック(ものづくり研究所へ移動します)


   
●山善 BASE CAMPでも「国際物流総合展」の展示内容について紹介しています。
https://www.yamazen.co.jp/ybc/contents/entry-2943.html
  

団地での実証実験という新しい挑戦

その「YAMAZEN AMR」、今回の団地での実証実験に使われたそうですね。

普段は、製造現場でAMRを走らせている私たちにとって、新しいチャレンジでした。実証実験のテーマは、団地や街区におけるラストマイルの移動です。高齢化が進むなか、移動にまつわる「あと少し」の距離が負担になるケースがあります。そこで、シェアマイクロモビリティを自由に活用して、より便利で活気のある街づくりにつなげよう、という未来像を検証する取り組みでした。「YAMAZEN AMR」が担ったのは、自由に乗り捨て・呼び出し可能なシェアマイクロモビリティを牽引し、必要な場所まで運ぶ役割でした。

実際に団地で走らせてみて、新たな気づきはありましたか?

やはり、安全面の重要性を強く感じました。工場の場合は基本的に作業者が働く限られた環境ですが、団地のような、子どもや高齢者など、さまざまな方が行き交う環境の中で、どこまで安全性を担保できるかは大きな課題だと思います。また参加された方からは、「どうやって自分の位置が分かるの?」「すごい技術ですね」といった声をいただきました。一般の方からすると、AMRが自律して動く機能自体が驚きなんだなと感じました。

実証実験に参加したことで、何か収穫はありましたか。

工場などの自動化において欠かせない、牽引対象とAMRの自動連結・自動切り離しを試せたことが、すごくよかったです。今回の実証実験に向けて、マイクロモビリティの牽引に必要な連結装置と連結治具(ポール)の選定・導入を担当しました。AMRが定位置まで移動してバックで連結し、所定の位置まで届け、自動で切り離すといった一連の機能を、実際の環境で運用することができました。販売時にも、オプションとしての展開を考えています。


自動連結の様子(連結前)

自動連結の様子(連結前)


自動連結の様子(連結前)

自動連結の様子(連結後)

快適な未来につながる小さな一歩

工場だけでなく生活の場における利用価値も見出したわけですね。

「YAMAZEN AMR」を団地で使ってみると、単に物を運ぶだけではない未来も想像できました。例えば、団地内にマイクロモビリティを使って人が集まる場所ができれば、「あそこに行ったら、あの人に会える」という楽しみが生まれます。何でもネットで完結する時代だからこそ、AMRが移動を後押しすることで、人と人とのつながりの架け橋になれるかもしれない。今回の実証はAMRの新しい価値に気づくきっかけになりました。


AMR導入を視野に入れているご担当者に、ひとことお願いします。

今回は団地という新しいフィールドに挑戦しましたが、私たちの主戦場はあくまで製造・物流現場にあります。幅広い選択肢を持つ商社だからこそ、お客様の現場や予算、働き方に合わせた提案ができる。それが私たちの強みです。産業ソリューション事業部では、疑問や不安にお答えする技術サポートのメンバーを揃え、実際に現場へ足を運んで課題を見つけ、提案からアフターフォローまで併走しながら、お客様に安心して使っていただける体制を整えています。今後もあらゆる「運ぶ」を支えてまいりますので、お気軽にご相談ください。

    
●ものづくり研究所「国際物流総合展2026」出展レポートは、画像をクリック(ものづくり研究所へ移動します)


  
●山善 BASE CAMPでも「国際物流総合展」の展示内容について紹介しています。
https://www.yamazen.co.jp/ybc/contents/entry-2943.html
  

※このインタビューは2026年9月に行いました。部署名等は取材当時のものです。