グリーンリカバリー・ビジネス部

箕輪 啓介

Keisuke Minowa

再エネの“地産地消”。PPAモデル事業が導く脱炭素化へのロードマップ

2022.10.27

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太陽光発電システムを無償で設置し、その電力を顧客が使用して、再エネへの切り替えを容易にする画期的な手法として注目を集めているPPAモデル事業。事業参入の背景と現在の取り組み、今後の展望について、グリーンリカバリー・ビジネス部の箕輪啓介に話を聞いた。

再エネ導入をワンストップで支援

2021年10月にスタートしたPPAモデル事業。そもそもの経緯を教えてください。

世界的な脱炭素化への動きを受け、マイルストーンである2030年までにCO2排出46%削減という政府目標が掲げられました。国内企業の多くが目標達成に向けた取り組み方を模索・検討しています。その有力な手段の一つが、再生可能エネルギーの導入。山善の顧客や仕入れ先には工場を所有する企業が多いですが、工場の屋根は太陽光発電のリソースととらえることができるんです。

私たち山善は太陽光発電システムの施工実績は豊富にあります。一方で小売電気事業者のライセンスは持っておらず、エネルギー提供に関するノウハウが乏しい。そこで大阪ガスの子会社であるDaigasエナジー株式会社と手を組み、共同ブランド『DayZpower』(デイズパワー)を立ち上げました。お客様に提供できる再エネ調達方法は、発電設備の自社保有か、外部から再エネ電気だけ調達するか、今回のPPAモデルの導入か、の3つに拡がったんです。



お客様にとってPPAモデル事業は施工から再エネ供給、維持管理までをワンストップで提供されるほか、初期費用や管理費が不要となるため、再エネ調達のハードルは一気に下がります。基本としているのはオンサイト型のPPA、いわば再エネの企業による地産地消。お客様によっては使用電力の過不足が生じますが、余剰電力はDaigasエナジー側で引き取るなど、柔軟な対応が可能です。

流通商社として常に新しいビジネスに取り組んできた山善にとって、この事業は“コト売り”への挑戦という点でも意義深いものですね。


手応えはいかがですか。

正直に言うと、産みの苦しみを味わっているところです。補助金関係の手続きの煩雑さ、半導体不足からくる施工の遅れなどもその理由ですが、一番はお客様のマインドの問題かもしれません。脱炭素が待ったなしであることはわかるし、再エネ化が有効な手段であることも理解している。しかし具体的に検討する段になると、なかなか現場は動けない。そんな状況です。

ただ、世の中では東証プライム企業に国際的な基準であるTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)に沿った情報開示が義務づけられたり、CDP(カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト)やMSCI(モルガン・スタンレー・キャピタル・インターナショナル)などの格付発表が予定されたりと、脱炭素化に向けて動かざるを得ない状況が差し迫ってきていることも事実。2023年には企業規模に関わらず、再エネ導入を促す強い風が吹くと思います。

パーパスの体現として

そんな中、最初の受注も決まったようですね。

第一号案件として、『クリネックスⓇ』『スコッティⓇ』などのブランドで知られる日本製紙クレシア様にPPAモデルを導入していただくことになりました。

温室効果ガスの排出量を算定する際の国際基準・GHGプロトコルではサプライチェーン全体の排出量を重視しています。


サプライチェーンにおけるScope分類

サプライチェーンにおけるScope分類

日本製紙クレシア様は当社のサプライチェーンにおいて「上流」のScope3、つまり山善の事業活動に関連する他社の立場となり、同時に日本製紙クレシア様にとっても山善が「下流」のScope 3となります。PPAモデルを導入していただくことでお客様にとっても山善にとっても、サプライチェーン全体の温室効果ガス排出につながるというメリットがあるわけです。いわばサプライチェーンでの協働(エンゲージメント)ですね。Win-winの関係を築いた上で、地球環境保全にもつながる。それは山善が掲げるパーパス『ともに、未来を切拓く』の体現とも言えそうです。


日本製紙クレシア 開成工場

山善自身がCO2削減に向けて取り組んでいることを教えてください。

大阪本社(1,2,3ビル)と物流拠点である「ロジス大阪」に再生可能エネルギー100%の電気を導入しました。これはGHGプロトコルのScope 2、自社での電気使用に当たる取り組みです。もちろん今後PPAモデルを仕入れ先企業に提案していくことで、Scope 3で定められている「原材料」の温室効果ガス排出量削減に貢献できると考えています。

『DayZpower』を一般名詞のように

今後の展望についてお聞かせください。

山善のPPAモデル事業はあくまでBtoB領域での事業ですが、この業界で“再エネと言えば『DayZpower』”と誰もが思い浮かべてくれるようなブランドに育てていきたいですね。そのために様々なツールやメディアを効果的に使って認知度を高めていく方針です。
先ほども触れましたが、これから2023年にかけて再エネ導入を促す強烈な風が企業に向かって吹くはずです。でも、そのリスクを察知していない企業は少なくありません。多くの企業は何の手立てを打つこともなくその嵐に身をさらそうとしているんです。
機械金属加工や住建業界では、流通商社として先駆的な取り組みとなる山善のPPAモデル事業は大いに“お役立ち”できると考えています。

山善としてはグリーン戦略や脱炭素戦略において、頼もしいパートナーとしてのポジションを確立したいですね。パイオニアとしてのアドバンテージのもとで蓄積した豊富な知見と、サプライチェーンの真ん中に位置する専門商社ならではのネットワークを活かし、企業の再エネ転換、そして脱炭素化に貢献していきたいですね。

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※このインタビューは2022年9月に行いました。部署名・役職等は取材当時のものです。

箕輪 啓介
PROFILE
箕輪 啓介

2012年新卒入社。2021年4月に新設された営業本部 グリーンリカバリー・ビジネス部にて、PPAモデル事業における顧客との商談やDaigasエナジー株式会社との連携業務を行っている。

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