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文: 和文化研究家 三浦康子

吊るす文化と畳む文化

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もっと上手に収納できないものか……収納の悩みは尽きませんが、昔の人はどうだったのでしょう?今と昔の大きな違いのひとつが、吊るす文化と畳む文化です。

私たちが着てる洋服は、ハンガーに吊るして収納しますが、昔の着物はひらたく畳んで収納します。出先で着替えてみるとわかりますが、着物も帯もみんな畳めばフラットになるため驚くほどコンパクトになり、風呂敷にさっと包んで、はいおしまい。ドレスやタキシードでは、こうはいきません。

昔の人は、こうして畳んだ着物を桐のたんすにしまっていました。桐は湿気に強く防虫効果が高いので、衣類の収納には最適だからです。また、秋冬には裏地のある袷(あわせ)の着物、春夏には裏地のない単衣(ひとえ)の着物となるため、裏地をつけたりはずしたりして衣更えすることもでき、着回しが効いてどんなサイズにも対応可能なため、そんなに枚数がなくても大丈夫。小さく畳むこともできますから、柳や竹で編んだ収納ケース「行李」(こうり)で事足りてしまう人も多かったのです。行李は旅行用のトランクにもなりました。

あらゆるものを押入れに

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畳む文化は、着物に限ったことではありません。代表的なのは布団ですが、今の暮らしと比較してみると、ベッドvs布団、ソファvs座布団、テーブルvsちゃぶ台、バッグvs風呂敷など、あらゆるところに使わないときは畳んでしまう文化が息づいていたのがわかります。それに、昔の庶民は家族全員が同じ部屋で暮らしていましたから、ものがあふれていては生活ができません。こうしたことは空間の有効利用や掃除のしやすさにもつながっていて、整理整頓が身についていました。

そして、畳んだものをしまう場所が押入れです。押入れの歴史は古く、江戸時代にはすでに使われていたそうです。間口の広さや奥ゆきを活かしていろいろなものをしまうので、行李や長持(木製の箱)を使って収納し、さらに押入れの上部を天袋にして、収納場所を確保しました。天袋には湿気がたまりにくいので、めったに使わない品物や思い出の品をしまうのにちょうど良かったのです。

こうした合理的な考えは様々なところに生きており、デットスペースを利用した「階段たんす」、収納グッズそのものをコンパクトに収納できる「入れ子」などがその例です。

蔵に学ぶ収納テクニック

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さらに、大きな家には物置専用の蔵がありました。とくに土蔵に使われている漆喰(しっくい)は、防火性が高く、湿度を調節する働きもあり、遮光や遮音にも優れているので、貯蔵品や財産を守るのにうってつけなのです。

収納スペースが大きいぶん、棚や入れ物を駆使して整理整頓し、目印をつけて台帳に記すといった手間がかかりましたが、それがものの管理に役立ちました。そうすれば、誰でも目的のものが見つかり、もとの場所へ返すのも簡単です。今でも旧家の“所蔵品”がきちんと分類・保管されているのは、こうした収納テクニックのたまものでしょう。おおいに見習いたいですね。

どこに何があるのかわからないと宝の持ち腐れになってしまうのは、今も昔も変わらないこと。誰もがわかりやすく、出し入れしやすい収納が、生活上手に結びつきます。昔と比べてものが増えた現代ですが、そのぶん豊富になった収納グッズが、私達の強い味方になってくれそうです。