昔のくらしから学ぶ! 11月のテーマ「温かく過ごす知恵」 体も心も温まる!昔から使われている暖房器具は一石二鳥の優れものばかり。

文: 和文化研究家 三浦康子

昔の暖房器具って?

昔の暖房器具って?

電気もガスもなかった時代、暖房といえば火を使ったものでした。たき火を家に持ち込んだのが「囲炉裏」で、囲炉裏は暖をとるだけでなく、鍋をかけたり魚を焼いたりし、その場で食べるダイニング。食事が終われば鉄瓶をかけてお茶をのみ、炉端で団らんするのです。毎日が鍋パーティーみたいなものですから、温かい料理と会話で心身ともにほっこり。昔の民家は風通しがいいため全体を温めることはできませんが、立ちのぼる煙は茅葺き屋根や梁の虫よけとなり、家を長持ちさせました。

やがて、炭火を使う「火鉢」も登場します。炭火は煙が出ないので座敷に置けますし、移動もできるため各部屋で手軽に使えるようになりました。手や顔をかざせば、遠赤外線効果で小さいながらも体の芯まで温まり、お湯を沸かしたりお餅を焼いたりするのにも重宝するため、火鉢の周りにはいつも人が集まってきました。また、お部屋のインテリアでもあったため凝ったつくりのものが多く、今でも人気の骨董品となっています。

こたつ開きは「亥の子の日」

こたつ開きは「亥の子の日」

おなじみのこたつも、もともとは火を使っていました。囲炉裏の上にやぐらを置いて布団をかけたのが「掘りこたつ」のはじまりで、火鉢とやぐらを組み合わせて布団をかけたのが「置きこたつ」です。やがて布団の上に板が置かれるようになり、こたつはテーブルとして家族団らんの中心になっていきました。

こたつは部屋全体を温めるものではありませんが、覆った布団のおかげで熱効率がとても良く、無駄なく温まります。昔から健康には「頭寒足熱」が理想的だと言われていいますが、こたつはまさにお手本でしょう。暖をとるために自然と人が集まり、温かな交流も生まれて心身ともに温まるのは、今も昔も変わらぬ情景です。

しかし、昔の暖房器具は火を使うものが主流だったため、火事が心配でした。そこで、中国の五行説で水を意味する「亥の子」の日(旧暦10月の亥の日。2009年は11月26日、2010年は11月9日)に炉開きをすれば火事にならないとされたことから、この日に囲炉裏や火鉢に点火するようになりました。今でも、こたつなどの暖房器具は亥の子の日に出す風習が残っており、茶の湯の世界でも炉開きをします。「亥の子餅」というイノシシの子供をかたどった餅をいただくのは、その名残りです。

パーソナルな暖房器具

パーソナルな暖房器具

一人用の暖房器具としては、炭火を入れる「行火」(あんか)や、熱湯を入れる「湯たんぽ」も愛用されました。とくに夜寒いと眠れませんから、湯たんぽや行火は夜の必需品でした。

これらを小型化したのが「懐炉」(かいろ)です。手軽におなかや腰が温まるため、寒い日の外出に好都合で、腹巻きの中にしのばせて出かける人も多かったそうです。

今でも改良されて使われていますが、近年とくに注目されているのが湯たんぽ。就寝前に熱い湯を入れて布団に入れておけば心地よく眠りにつけ、だんだん冷めていくので低温やけどもしにくく、朝はこのぬるま湯で顔も洗えます。昼間も湯たんぽをデスクワークの冷え対策に使う方が増えており、エコなグッズとして人気上昇中。また、かわいいデザインの腹巻きが女の子の定番となっていたり、洋室でイス式のこたつを使う家庭が増えてきたり……どうやら、時代のニーズが昔ながらの知恵を求めているようです。