昔のくらしから学ぶ! 7月のテーマ「涼しく過ごす知恵」 五感を刺激して涼を呼ぶ。繊細な感性をもつ日本人ならではの知恵とは?

文: 和文化研究家 三浦康子

日本人の感性が光る 風鈴

日本人の感性が光る 風鈴

チリン、チリーン……涼風が吹き、風鈴の音が響きます。風鈴のルーツは古代中国にあり、魔よけや占いに使うものだったとか。これが日本に伝来すると風を知らせる役目をもつようになり、朝顔や金魚が描かれたガラス製の江戸風鈴、南部鉄製の南部風鈴、陶器製の瀬戸風鈴などさまざまな風鈴が生まれ、夏の風物詩としてその風情を楽しむようになりました。

ひと昔前までは家々の軒先に下がっていた風鈴も、現在は少々肩身が狭くなりましたが、だからといってすたれるわけではなく、ご近所に配慮して室内の風の通り道に下げたり、インテリアとして飾るなど、いろいろと折り合いをつけて楽しむ方が増えているから、すごいことです。最近は、伝統的な手法に斬新なエッセンスを加えた風鈴も続々登場しており、その音色が現代人の心に響いています。

このように風鈴が見直されているのは、エコの観点からも存在価値が高いと気づいたからでしょう。エアコンに頼るのではなく、風を取り込む暮らしにシフトすることでエコにもつながり、その音色が精神的な涼しさをもたらします。

町屋に学ぶ 夏の暮らし方

町屋に学ぶ 夏の暮らし方

とくに日本の夏は蒸し暑いため、夏を快適に過ごせるかどうかが重要なカギとなります。吉田兼好が『徒然草』で、「家の作りやうは、夏をむねとすべし。冬はいかなる処にも住まる。暑きころ、わろき住居は耐え難きことなり」と書いていますが、涼しく暮らすための代表例が京都にありました。

昔から京都盆地の猛暑は有名ですが、狭い路地を歩いていると、涼しげなすだれや麻ののれん、ツルを伸ばした朝顔、打ち水をした玄関が多いので、清々しく感じるでしょう。昔ながらの町家に一歩足を踏み入れれば、靴の底からひんやりとした土間の感触がわかり、さらに座敷に上がると、ふすまが風を通す簾戸(すど)へ、障子がすだれに替えられており、かたわらには扇風機。風鈴の音とともに流れる風が、汗ばんだ肌をなでていきます。さらに何気なく置かれたうちわに手を伸ばし、ふと坪庭に目を移せば小さな池の水草や苔がみずみずしく映り、部屋のすみから蚊取り線香のかすかな煙が流れてくる……これは私が経験したほんまの話。今も昔も京都の町家は6月になるとこのような夏仕様に替えられ、涼しげなたたずまいになって本格的な夏を迎えるのです。

まねしたい!八十八夜の夏じたく

まねしたい! 八十八夜の夏じたく

また、日本には八十八夜(5月2日頃)に夏じたくを始める風習があるのをご存知でしょうか。立夏(5月5日頃)を目前にして、入梅前で気候がいいこの時期にすだれや夏ぶとんなどの準備を進めておく、暮らしの知恵です。さらに、八十八と末広がりで縁起のいいこの日に夏じたくを始めることで、夏を元気に乗り切ろうとしたわけです。

エアコンは体感温度しか変えませんが、こうしたものごとは、五感を刺激して涼を呼ぶものばかり。繊細な感性をもつ日本の知恵に、あらためて脱帽してしまいます。