昔のくらしから学ぶ! 6月のテーマ「湿気対策」 いつの時代にも通用する、高温多湿の日本で生まれた湿気対策の知恵とは?

文: 和文化研究家 三浦康子

湿気を吸収・放出する畳

湿気を吸収・放出する畳

世界各国、その国の気候風土に合った暮らし方がありますが、日本の暮らしには湿気対策が欠かせません。とりわけ日本の夏は高温多湿で蒸し暑いのが特徴で、梅雨の時期はとくに大変なため、湿気との戦いに昔の人は知恵を絞りました。

その代表格が畳です。畳に使われているイグサは、それ自体が湿度を含んでおり、気候に合わせてまるで呼吸をするかのように自ら放出や吸収を繰り返します。一畳でおよそ500ccの水分を吸収し、乾燥すると湿気を放出するそうですから、天然の除湿・加湿器のようなもの。蒸し暑い夏でも畳はさらっとし、乾燥する冬でもしっとりしているわけです。

さらに、イグサにあいている無数の気孔が温度調節の役目も果たすため、夏は熱を吸収してひんやり感をキープし、冬は冷たい空気を遮断して暖かい空気を逃がさない保温材になってくれます。また、スポンジ状の構造で弾力性があり、衝撃も吸収するので転んでも怪我が少なく、音も遮断してくれますし、空気の浄化、心和む香り、人肌に近いトーンで筋肉を弛緩させる色彩のリラックス効果など、畳のメリットには感心するばかりです。

風通しをよくするために

風通しをよくするために

こうした高性能な畳と、襖や障子で構成された風通しの良い構造のおかげで、日本の家は湿気をはらってきましたが、冷暖房の普及や防犯の問題もあり、密閉された家に変わってきてしまいました。湿度を下げるためには換気をして空気を動かすことが大切ですが、このままでは湿気がたまる一方です。

そこで活用したのが換気扇や扇風機。窓をあけて換気扇をまわし、さらに扇風機で空気の流れを助ければ、風通しの悪い家でも換気ができるようになりました。また、風の通り道をつくるために梅雨時になると家具を動かし、壁との間に隙間をつくったり、湿気がこもりがちな押し入れ、下駄箱、流し台の下にも扇風機を当てて除湿をするなど、様々なことを実践してきました。こうした湿気対策は、今でも支持されています。

湿気をためない一工夫

湿気をためない一工夫

それから、すのこの存在も見逃せません。すのこは、廂(ひさし)の外側に並べた簀子縁(すのこえん)という外廊下に由来し、隙間があいているので風通しがよく、雨も溜まらない優れものとして京都御所などの御殿に用いられていました。これを小さくしたのが現在のすのこで、押入れに敷いて湿気がたまらないようにするテクニックは、長年続く湿気対策です。その機能性が支持されて、すのこを用いた収納家具やベッドなどが注目されているのも、日本の気候風土にマッチしているからでしょう。さらに、吸湿性の高い新聞紙をすのこの間に入れたり、下駄箱やたんすに敷いたりするのも、受け継がれてきたおばあちゃんの知恵です。

湿度が高いと不快指数が高まるばかりか、カビもはえ、大切な家財も傷みます。湿気をためない一工夫がエアコンや除湿機の発達した現在でも活かされているように、気候風土に基づいて育まれてきたものは、いつの時代にも通用するのです。