昔のくらしから学ぶ! 5月のテーマ「初夏のアウトドア」 今も昔も、自然に親しむアウトドア・レジャーは心身の健康に結びついています。

文: 和文化研究家 三浦康子

風薫る季節こそ森林浴

風薫る季節こそ森林浴

移りゆく季節の中で、梅雨入り前のうららかな初夏はとても過ごしやすい時期。家でじっとしているのがもったいないくらいで、心地良い風が外においでといざないます。

昔から初夏の風を「薫風」と呼び、今でも「風薫る5月」というフレーズをよく使いますが、実はこれ、本当なのです。5月といえば新緑の季節。木々の成長が最も盛んとなるため、虫や細菌をやっつける揮発性物質「フィトンチッド」をいつもよりたくさん出しています。これが芳香を含んでいるため、木々の間を吹き抜けてきた風は爽やかな香りを含んでいるというわけ。科学的に解明されたのは近年のことですが、昔の人はそれを感性でキャッチし「風薫る」と表現したのですから、何と素敵な感性でしょう。

また、フィトンチッドには心身のリフレッシュ効果があり、森の中を歩いたり木々の香りをかぐだけでも最高血圧が下がったり、脳を流れる血液の量やストレスホルモンの分泌量が減ったりすることが最近の研究で実証されているそうです。さらに、森の中ではマイナスイオンも多く、周辺に比べて昼は涼しく夜は暖かくなるという特徴があり、風も弱く湿度も高いため、とても心地良く過ごせます。昔から健康のために森林浴をするのも道理ですね。

自然を浴びて健康促進

自然を浴びて健康促進

こうした森林浴だけでなく、自然のパワーを浴びることが身体に良いことを昔の人は知っていて、それを「浴」という字で表しています。森林浴、日光浴、海水浴、温泉浴はもちろんのこと、滝浴、湖浴というものまであります。滝浴は「たきあみ」と読み、江戸時代から親しまれていたそうで、涼を呼ぶレジャーとしても流行っていました。安藤広重の浮世絵、名所江戸百景「王子不動之滝」では、ふんどし姿で滝浴をする男性と、滝つぼの横で宴の準備をしている様子が描かれています。

また、おなじみの海水浴は19世紀の後半に西洋で海洋療法(タラソテラピー)として始まり、医者が処方していたので、まさに健康のためのもの。日本に入ってきたのは明治時代で、西洋医学を学んだ軍医が提唱し、神奈川県の大磯で普及につとめたそうですが、海に囲まれた国ですから海水浴をするにはまさに最適の環境。当時は露出の少ない七分丈のパジャマのような水着で海に入っていましたが、大衆に広めようと海水茶屋(海の家のルーツ)も設置され、レジャーとして広がっていきました。

楽しく元気で・・・ありがとう!

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こうしてみると、アウトドア活動がエネルギーチャージに通じることを実感しますが、さらに日本では、自然に畏敬の念を抱き、感謝することも忘れませんでした。

それがよくわかるのが、山開きです。八百万の神がいる日本では、あらゆるところに神がいるとされ、名のある山は信仰の対象であり、おいそれと登ることはできません。そこで、山に入る期間を定め、入山初日に山開き、最終日に閉山の神事をするようになり、山の神に感謝したのです。やがて、山開きにならって海開きや滝開きも行われるようになり、今ではレジャーシーズンの幕開けを意味するようになりましたが、安全に過ごせるよう祈るのは今も昔も変わらぬことです。

思う存分楽しんで自然に元気をもらったら、その恩恵に感謝する。それが心身の健康に通じることを、昔の人は知っていたのでしょう。自然を荒らすこともなく、ごみを残すのはご法度で、来たときよりも美しくという気持ちを忘れなかったようです。